「竹笛の基礎知識」についてじょじょに書いていく予定です。関心があればお読み下さい。(質問等、お気軽にお聞かせ下さい。)
 1.はじめに  2.カナイ笛と従来の竹笛の音色の違いについて  3.竹笛の値段について  4.竹笛の調律と調整について  5.そもそも、竹笛とは?

1.はじめに

 カナイ笛は、営利目的の商品ではありませんので、「心を拓き育む笛」という理念をご理解頂ける方にのみご購入頂いております。(例えば、コンクール使用目的の方への販売はいたしておりません。)笛(楽器)に限らず、ものには製作者の思い(願い・夢)が込められているのではないでしょうか。私にとって、笛は神聖なものです。製作時には、例えば象牙多層球(台湾の故宮博物館にある、完成までに親子三代を要したといわれる象牙の置物)や、「一首の和歌を作るのは一体の仏像を彫るのと同じ事」と考える西行のことを思い浮かべます、ものを作るとはそういう事なのだと‥‥。

「朝に道を聞かば夕に死すとも可なり」という言葉の「道」を「究極のひびき(音色)」に置き換えれば、私のカナイ笛製作の願い・心得になるかも知れません。(カナイ笛がそれなりに仕上がるまでには少なくとも数カ月、時には数年かかります。一本一本究極を目指しますから必然的に量産は不可能です、生涯に百本もつくれるでしょうか‥‥。つまり、完成度が笛の値段ということになる訳です。因みに、過去、会心の作が5本、それに近いのが十数本といったところです。)笛がオモチャやお土産品になってしまえば、笛の精神性は滅んでしまうでしょう。人は皆明日の文化の担い手です、志高くありたいものです!


2.カナイ笛と従来の竹笛の音色の違いについて

 「このような音色は今まで聴いたことがありません‥‥!」
工房を訪れたあるプロの女性竹笛奏者が、私の吹く笛の音色を聴いた後に、驚いた表情で語った言葉です。この方は、しの笛や能管・フルート等、西洋東洋の様々な笛を吹かれる方で、全国を舞台に演奏活動しておられます。この方の言葉は一考に値するのではないでしょうか?
(音色に関して客観的な立場にあると考えられますから。)音色については、追って話していきたいと思いますが、ここでは音色には違いがあるということをまずは知って欲しいと思います。ピアノとギター、フルートと竹笛の音色の違いというその違いではなく、同じバイオリンでも音色が違うという時の、その音色の違いです。その違いというものが分からない方には、3万円のバイオリンと3億円のストラドバリウスの名器の音色の違いも恐らくは分からないでしょう。関心がなければ違いは分からないものだからです。音色の違いが分かるかどうかは、プロ・アマチュアには全く無関係の事柄なのです。(基本的に、それは奏者というよりもそれ以前に製作者の課題と言えます。奏者は無関心でいられても製作者はそうはいきませんから。)

 さて、先のプロの女性竹笛奏者は、私の笛の音色の美しさを褒めたのではありません。単にそれだけでしたら、驚くことはなかったでしょう。(フルートも吹かれる方ですから、フルートの神様・モイーズの音色も当然知っておられるはずです。余談になりますが、私が過去楽器の音色を聴いて驚異に感じたベスト3は、1位=ギターのセゴビア、2位=バイオリンの鈴木慎一氏、3位=チェロのカザルスです。モイーズは4位。)彼女が驚いたのは、実は「音色のゆらぎ」なのです。一音のひびきの中で、倍音を変化させ音色にグラデーション的な表情の変化をつけて吹いたからなのです。初めて聴かれる方には、恐らく魔術(手品?)か何かに思えるのではないでしょうか‥‥。(このカナイ笛特有のひびき「音色のゆらぎ」は、「カナイトーン」ともいうべきものですが、私自身いまだに信じられない思いは変わりません‥‥。CDではわかりにくいです。マイクの限界と要所要所でしか用いない理由からです。生で聴けば誰にでもハッキリとわかるのですが。)

 ともあれ、カナイ笛と従来の竹笛の音色の違いは、なんとなくあれよりはこれがいいといった(曖昧な)違いではありません。一音の音色にゆらぎを与える事が出来るか否かという、楽器の能力上のはっきりとした違いなのです。これには秘密があります。製作法と演奏法の両方にあります。公開できる部分とできない部分がありますが、いずれにしても、モノマネできるような事柄ではないことを断言しておきたいと思います。(2007.4.18記)


3.竹笛の値段について

                             
 竹笛の値段について考えてみたいと思います。尺八に関しては今は詳しくは触れないでおきます。実情だけをお話しますと、竹製の尺八は10万円位から手に入りますが、それより安いのは木製品です。私の知っている方は600万円のものを持っていますが、数百万円のものを持っておられるかたは少なくないようです。(理由の一つは、歌口の部分の研究が進んでいるからかも知れません。)いずれにしましても、尺八に関しては、数十万という値段は決して驚く値段ではありません。(個人的には疑問に思っていますが‥‥。)

 さて、横笛に関しては、高額なものは現在のところ存在しないのではないでしょうか。(最近、300万の煤竹の横笛を販売している方の存在を知りましたが、他にはいないと思います。)ただし、手の込んだ作りをする能管などは例外で、数十万するのも充分理解できます。それ以外の作りのシンプルな横笛、例えば篠笛の場合、高価なものでも数万円で手に入ります。飾りなどのない極めてシンプルなものは数千円が相場です。私の知る、ある篠笛の先生は300本所有しているようですが、その方の先生はなんと600本所有しているそうです。つまり、篠笛には高価なものが存在しないということです。

 沖縄の古典で吹かれている横笛はどうでしょうか?1万円前後が相場ではないでしょうか。(最近は本土からの輸入ものが多いようですが。)自分で作った笛で吹かれている方も結構多いかもしれません。が、はっきり言って、いわゆる名器(と呼ばれるような笛)を所有されている方は存在しないはずです。

 本題に入ります。竹笛は、その製作に特殊な技術を必要とするものとそうでないものとがあります。特殊な技術を必要としなければ、簡単に言えば、誰にでも作れるわけです。つまり買う必要はありません。自分で作ればよいのです。納得がいくまで何本も作ればいいのです。(私がそうであったように。)竹笛の作り方は、いくらでもインターネットで知ることができます!(ありがたいですね。)このような貴重な情報を無料で提供される方がおられるかと思うと、その一方で、知らない人を相手に金儲けする人がいたりします‥‥。

 特殊な技術を必要としない竹笛の値段、あなたはどう考えますか?私の見解をズバリ述べます。材料(竹)の値段プラス穴を空ける工賃プラスアルファ、ということになるでしょう。竹は1本100円位で入手できます。(竹の材料としては最高と言われている煤竹でも、数千円で手に入ります。)穴を空ける道具は数百円もあれば足りますし、電動ドリルを使えば、数分の作業で済んでしまいます。(過去、音楽の先生方の研修会に講師として招かれ竹笛作りを実演披露した事がありますが、その時は調律完成まで15分位でしたでしょうか。道具は錐と棒ヤスリとペーパーだけです。電動ドリルを使えば2、3分もあれば充分でしょう。)

お金もかからず、時間もかからない。こうして仕上がった竹笛が数千円もするわけがありません、数万円など言語道断です!高くて500円から1000円程度が妥当な値段というものです。しかもそれは曲が吹ける程度に調律されていることが最低必要条件です。当然です。もし調律されていなければ?それはハッキリ言って詐欺行為といっても過言ではありません。例えば、メーカーの(ヤマハなどの)木製リコーダーで調律のおかしなものがあれば即返品は常識です!楽器は調律されてはじめて商品になるのです。もし調律がおかしければ、周囲が迷惑するだけです。特に、児童の耳には有害でしょう。(私に言わせれば、なによりも竹が可哀想‥‥。)

 竹笛の値段は、工賃にあるのではありません。調律・調整にあります。調律不能の笛は商品にはなり得ません。ピアノは自分で調律できない楽器なので調律師が存在するのです。(調律の相場は3万円から5万円位でしょうか、著名になればさらに高額かと思います。)調律の大切さは、弦楽器奏者なら皆熟知しています。
 カナイ笛特有の作業は、実はその調律作業が済んだ後から始まるのです。調律作業後の世界、これがいまだ知られざる世界なのです。まさに驚異の世界、神秘の世界です。が、今これをすべて公開するのは控えています。(製作法をすべて公開しても、制作技術の課題があり、それをクリアーしても、また別の課題が実はいくつかあります‥‥。)(2007.4.19記)
 


4.竹笛の調律と調整について

 調律は音程の問題ですが、音が出にくいとかいった問題はまた別の課題になります。調整作業がいくつかあるわけです。音が出にくい出やすいといった事に関してお話したいと思います。「私のこの笛、音が出にくいように思えるのですが、見てもらえませんか?」と相談を受けた事がありましたが、一見して原因がすぐに分かりました。2、3分位でしたでしょうか、調整してさしあげたら、「あれっ!出やすくなりました!」と驚いておられました。値段は忘れましたが、黒い漆で仕上げられた数万円の篠笛でした。

私は横笛であれば一見してその笛のレベルが判断できます、吹く必要はありません。吹けば、製作者の技術のレベルまですべてわかってしまいます。(何千本も手がければ当然かもしれませんね‥‥。)私の知る限り、(最近知り得たある方を除けば、)横笛製作者でフルート製作者程にその製作技術を研究しておられる方はまずいません。とりあえず尺八製作者を見習うべきではないでしょうか。具体的に言うと、一つには歌口に関する研究課題があります。西洋の横笛(フルート)製作者に遅れをとっているのは残念です。実は、フルートには到底思いもよらない、東洋独特の深遠な未知の世界が潜んでいるのです‥‥。今後横笛の世界が大きく変わっていくであろうこと、これは確かなことです‥‥。(2007.4.20記)


5.そもそも、竹笛とは?

竹笛をどう考えるかは人様々でしょう。

商品として考える人にとっては、売れればよいわけですから、1本でも多く売れる為にあの手この手の策を講じながら、 10本よりは100本、100本よりは1000本と、作っては売り作っては売りしていくのでしょうか?

ちょっと考えてみてほしいのですが、
そのようにして作られた笛(理念も運指法も定かでない、正体不明のモノマネ笛)を、あなたなら、生涯の心の友として持ち歩けますか?
(友をみればその人がわかるように、蔵書をみればその人が推測できるように、持ち物もその人を如実に表すものです。楽器ならなおのことです!価値観がそこに反映されるわけですから‥‥。)

それに、竹笛といっても色々あるのです。琉球の古典で吹かれている笛もあれば、本土の笛や中国の笛、東南アジアの笛、インドや南米の笛、指使いも違えば、用途も同じではありません。その人の目的によって、どの笛がよいのかは決まります。笛にはその笛の歴史(伝統)というものがあるわけですから、その違いをきちんと説明してあげることは当然の義務ではないでしょうか?
この人には篠笛がよさそうだという場合であっても、そのことには触れずに、とにかく、売れさえすればそれでよいのでしょうか?

出会いの大切さを理解している人なら、
「竹笛との出会い」をいい加減には扱えないはずです‥‥。


私の場合ですと、私のオリジナルの笛に出会えて本当によかったという方が数人いればいいかなと考えています。50人も100人も考えてはおりません。(本気で向き合って下さる方が一人でもいれば、というのが本音でしょうか‥‥。)

ですから私は笛を作る必要は実は今のところありません。(気が向いた時に作ります。正確には気が向いた時にしか作りません。)私の目的は笛を売ることではありません。私の笛(の理念)を本当に理解してもらえる人(仲間)を探しているのです。(過去2、3人の方には笛を購入するのを断念してもらったことがありますし、たとえ楽器店であっても、私の笛をおいてもらうようなことは絶対にあり得ません‥‥。)
私が笛を気軽に販売しないものですから、これ幸いと商売する人が出てきたのでしょうか?私がその気になれば、モノマネ笛のような怪しげな笛ではなく、楽器レベルの笛であれば、一日に100本や1000本は簡単につくれます。

モノマネ笛での商売など考えずに、純粋に、
無料(ボランティア)での竹笛普及を考えてほしい!と願うこと切です‥‥。
沖縄の為、日本の為、ひいては世界の為、未来のために‥‥。
(2007.4.21記)


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